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第34回 国民文化祭・にいがた2019、第19回 全国障害者芸術・文化祭にいがた大会

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PRサポーターズ&インタビュー・コラム

若い人の内向き志向(young people's inward orientation)

2019年5月9日

PRサポーター 新潟産業大学長 星野三喜夫さん

星野三喜夫学長

若い人の海外への関心や興味が薄れている。困ったものだ。学生にその訳を問うと、「日本は清潔で安全、またコンビニや自販機が至るところにあって便利で快適、不自由はない。だから敢えて海外に行く必要なんかない」との答えが返ってくる。私の国際経営論の授業で、日本企業はもっとグローバル化を進めるべきかと質問すれば、そうだと答える。しかしその学生に、自身は留学したいか、グローバルに事業展開をしている企業に就職して海外で仕事をしたいかと訊くと、否との答えである。さらに事情を訊くと、中学や高校で
海外の事象やグローバルな知識を教えてもらった記憶がないし興味もない、と言う。若者を外に向かわせる動機付け(モチベーション)がなされていないのだろう。

時間的に余裕がある大学生であれば、アルバイトで少しのお金を貯めて、しばし日本の外に出て外から日本を見つめて欲しいと思う。筆者がそうであったように、それまで自身の持っていた価値観や考え方がかなり変わる筈である。こんなに素晴らしい国はないと日本を見直すことであろう。日本のパスポートはビザ無しで行ける国の数では世界一(2018年1月時点)で、世界190の国に今日直ぐにでも行ける。フランスやドイツ(188か国)、英国と米国(185か国)を押さえて、日本のパスポートは世界最強なのに、実に勿体ない話である。

短期間でも海外に行くと、向こうの人の、いつも自分が先に「指導権を握る」「優位に立つ」という「優位戦思考」にびっくりするであろう。欧米人式のこの優位戦思考に基づく行動様式に、日本人はどうしても負けてしまう。そして常にストレスを感じる。せっかく良いアイデアや技術を持っていても、議論や交渉で勝てない。そこでは日本人の「美しき譲り合い」や「言わなくても分かってもらえる」などは通用しない。筆者が7年間滞在した米国では、小さいうちからショー・アンド・テル(show & tell)やディスカッション、ディベートの時間に、これでもかこれでもかというくらいこの優位戦思考を訓練していた。

ネットの普及により外の世界との関わりが変わってきたのは確かである。仮想現実での疑似体験が可能となり、また翻訳技術の発達により海外の書籍や映画が翻訳版や字幕版で読んだり観たりすることができるので、わざわざ外国に行かなくても良いと考え勝ちである。しかし、今の世界は経済、社会、文化を含めあらゆることが他国とのリアルな相互依存の上に成り立っている。若者は、スポンジが水を吸い込むような柔軟なうちに、身近で便利な環境や恵まれた同質的な人達だけの手の届く範囲で満足せずに、違った環境や異文化に身を置き、そこでの不便さや厳しさ、難しさ、多種多様な考え方、習慣、文化を持つ人々に揉まれて欲しい。異なった価値観を体験することで得られる「気づき」を実感し、学んで欲しいと思う。「優位戦思考」を身に着けろとまでは言わないが、日本の利益や立場を主張できるようになって欲しい。そうでなければ、国際社会で日本の存在感は低下するばかりである。

新潟産業大学

卒業時の就職活動に不利に働くことが海外留学を敬遠させる理由の一つになっているとも聞く。グローバル人材育成のためには、海外経験のある若者がメリットを実感するような仕組みをもっと作る必要がある。グローバル人材を受け入れる企業や自治体とのマッチングを含めて、教育界も政府や企業と一緒に真剣に取り組んでいきたいと思う。


星野三喜夫さん/神奈川県出身。
早稲田大学法学部卒業、日本大学大学院 総合社会情報研究科 博士前期課程国際情報専攻修了。
東京銀行 (現 三菱UFJ銀行)、財団法人 海外投融資情報財団 常務理事兼調査部長、新潟産業大学経済学部教授、副学長、経済学部長、大学院経済学研究科長を経て、平成30年4月より学長に就任。
柏崎商工会議所特別顧問、柏崎文化協会顧問、学校法人柏専学院副理事長、同評議員。
専門は、国際経営、国際金融、アジア経済、貿易実務、ビジネス英語。

※役職等は執筆時現在です。

■関連リンク
新潟産業大学
新潟産業大学(Twitter)
新潟産業大学公式カレッジソング「N・S・U」(YouTube)

印刷用コラム:若い人の内向き志向(young people’s inward orientation)(PDF形式739KB)
PDF版デザイン協力:新潟県タオ国際交流員