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第34回 国民文化祭・にいがた2019、第19回 全国障害者芸術・文化祭にいがた大会

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PRサポーターズ&インタビュー・コラム

あなたがこのお客さんを喜ばせるにはどうする?
~小さな温泉旅館のおもてなし~

2019年5月8日

PRサポーター 越後長岡よもぎひら温泉 花の宿 よもやま舘 代表取締役 田中敏也さん

2004年(平成16)1023日に、新潟県中越地方を震源として最大震度7の新潟県中越地震が起きました。その地震による大きな被害から復興し、「ただいま」「おかえり」と遠方からのお客様にも愛される蓬平温泉の「花の宿 よもやま舘」。地震後には、温泉の特徴がより一層濃くなり、つるつるすべすべになったとか。今回は、そんなよもやま舘のお話です。

 蓬平温泉にあるよもやま舘は、歴史があるのですね。

田中 田中家は、この地区の庄屋でした。歴史は長く、当初は「田中屋」という湯治場だったのですが、昭和に入ってから旅館になり、今日に至っています。

よもやま舘の花舞台
川を挟んで向かい側の食事処から楽しめる。

 よもやま舘では、屋外に舞台があるのですね。

田中 平成4年の10月にはリニューアルオープンし、立地を活かして、川を挟んで外に舞台を造りました。元々舞台は宴会場にあり、踊りを披露していました。でも、団体用の宴会場なので2名、3名のお客様は観られないのです。宴会場を覗いて観ているお客様もいらっしゃいました。そこで、少人数のお客様も観られるように舞台を外に出したのです。毎晩、女将と客室係が踊りを披露していますので、お客様は食事を楽しみながら、川の向こう側にある舞台を観ることができます。
客室係は、1種類、2種類踊りを踊られます。踊りの先生が「いいよ」とおっしゃってくださってから舞台に上がります。

 平成16年10月の新潟県中越地震では、大きな被害に遭われましたね。

田中 建物が一部倒壊し、客室もぐじゃぐじゃになりましたが、建物を直すにあたって、どうせならお部屋をよくしようと思いました。小さなお部屋2つを一つにまとめたりして、客室15部屋、90人のお客様が宿泊できる、小さな旅館として生まれ変わりました。

地元の食材を活かしたスイーツ

 よもやま舘の魅力は何ですか?

田中 まず1つ目は、さきほどお話した舞台です。
2つ目は、お料理です。地震後、小さな旅館に生まれ変わり、小さな旅館だからやれることはないかと考えました。
まず、お料理の出し方です。お客様はそれぞれお料理の食べ方が違います。食べる速さや、話をしているだとか、様々です。食べている様子を見計らって、厨房に何人分の天ぷらを揚げてくださいと伝えて、その方たちのために暖かいものをお出しします。
お料理もこだわっています。私の2番目の兄が料理長をしていまして、蓬平の味がよくわかります。姪である料理長の娘はパティシエで、スイーツ専門です。その日、ゼロからスタートして、地のものを活かして、すべて手作りでお出ししています。
スイーツには、かぐらなんばんを使ったこともありましたよ。
3つ目がお風呂です。
蓬平温泉には3軒の旅館がありますが、3軒とも泉質が違うのです。湯脈が最低3つあるということですね。3つの温泉を楽しめるように、湯めぐり券を用意しています。

よもやま舘の温泉

よもやま舘の露天風呂は川に沿っていますので、川のせせらぎを聴きながら、ゆっくり入ることができますし、時期によっては蛍が舞っているのも見えます。
この3つに加えて、働いている社員の「おもてなし」があります。
料理がいいといっても、出し方を間違えたらダメです。「この料理は何ですか?」と聞かれたときにきちんと答えられるかとか、山菜の「こごみ」をこの辺りでは「こごめ」というのですが、説明のときに方言を交えたり、そういった「おもてなし」をしています。
よもやま舘では、社員用のマニュアルはありません。「あなたがこのお客さんを喜ばせるにはどうする?」と自分自身で考えてもらっています。
マニュアルどおりにやっていると、マニュアルと違うお客様がいらっしゃったときに、頭が真っ白になってしまうらしいですよ(笑)。

旅館内に飾られた生け花

間違ったり、お客さんが憤慨したら、まずは謝りなさいと。謝ればお客さんはそんなに怒らないから大丈夫と、社員に言っています(笑)。
どうしてもわからないということは、全体会を設けて全員で決めるようにもしています。
今年も高校を卒業した社員が入りましたが、マニュアルなしというのは難しいですよね。
ですから、初心者マークのようなものを作って、「これはあなたをカバーしてくれるものだから!」と新入社員につけてもらっています(笑)。
お花も毎日生けてもらっています。一般企業に就職すれば、そんな機会はないと思いますが、旅館のあちらこちらに生けているうちに、空いている場所に生けたいという気持ちになるようです。
外では、水仙、桜、カタクリ、菖蒲などが季節毎に綺麗に咲くので、花を見においでになるお客様もたくさんいらっしゃいます。
お客様は旅行などで旅館に来るときにプラスの気持ちでおいでになります。中には、けんかをしてマイナスの気持ちでおいでになる方もいらっしゃいます。プラスの方はさらにプラスに、マイナスの方はいかにプラスに上げるか、それが我々の使命です。お客様がお帰りになるときに、「ありがとう」と言ってもらえるようにするには、どうしたらいいか考えてもらうようにしています。小さな旅館だからこそできることだと思っています。

裏庭の菖蒲園

 そういったところが、よもやま舘の魅力なのですね!

田中 旅館は本来、家族の延長のようなものなので、それを感じ取っていただけるのかどうかということを、大事にしています。
毎月、おいでになるお客様もいらっしゃいます。その方は「ただいま」とおっしゃっておいでになりますし、こちらは「お帰りなさい」とお迎えします。よもやま舘はリピーターが多く、「部屋は全部わかるから、案内はいらないよ」というお客様や自分専用のスリッパを置いていらっしゃるお客様もいるのですよ。

切り紙が添えられたランプシェード
田中敏也さんのお手製で、季節によって切り紙を変えるのだという。

 中学生などに旅館のお話をされる機会もあると伺いましたが。

よもぎひら雪想灯

田中 中学校の授業の一環の職場体験も受け入れています。旅館はきれいで当たり前なので、皿洗い、布団上げ、お風呂掃除などそういった普段は見えない裏方の仕事をしてもらっています。その際に、少人数でいろいろな旅館のお話もしています。
長岡の大学の大学生のインターンシップも受け入れたことがあります。そのときは、住み込みで旅館の仕事をしてもらいました。
我々はウェルカムなので、皆さんの思い出になって、「あの時、ここで過ごしたよね」と、また戻ってきてほしいと思っています。
冬には、ボランティアの方に来てもらって、この地区で「よもぎひら雪想灯(ゆきものがたり)」という雪の中のあかりのイベントを開催しています。ボランティアの中には、県外出身の大学生などもいるので、長岡は花火だけではなく、こういう温泉があるんだよと知ってもらうためにも、温泉に入ってもらっています。せっかく長岡に来たのですから!

田中敏也さんの名刺
押し花が添えてあり、さりげない心遣いが嬉しい。


(平成31年4月9日インタビュー)
※役職等はインタビュー時現在です。

 

 

 

 

 

■関連リンク
越後長岡よもぎひら温泉花の宿よもやま舘
花の宿よもやま舘(Facebook)

印刷用インタビュー:あなたがこのお客さんを喜ばせるにはどうする?~小さな温泉旅館のおもてなし~(PDF形式1,188KB)
PDF版デザイン協力:新潟県タオ国際交流員