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第34回 国民文化祭・にいがた2019、第19回 全国障害者芸術・文化祭にいがた大会

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PRサポーターズ&インタビュー・コラム

カメラで描く~村上市大池の白鳥が世界へ翔ぶ~

2019年4月11日

PRサポーター 写真アーティスト 内山アキラさん

村上市にある「お幕場大池公園」は昔、村上藩主などが赤松林に幕を張り、野宴を楽しんだといわれている場所です。内山アキラさんが撮り続ける夜明けにこの大池を翔び立とうとする白鳥は、一般的に思い浮かべる写真とは違い、筆で描いたようでもあり、エッチングのようでもあります。その内山アキラさんが会長の内山写真館で、お話をお伺いしました。

内山アキラさん
(自然光が入る内山写真館にて)

 内山写真館は自然光が入るスタジオなのですね。

内山 20年近く前に、自然光で撮れるように設計しました。この自然光で撮れるスタジオは画期的で、日本全国から見学者が来ました。
当時はフィルム写真の時代で、どこも暗いスタジオで、ライトを使ってかしこまった姿の写真を撮っていました。デジタル写真ではなかったので、
余程の光をコントロールする力がないといい写真が撮れなかったのです。
このスタジオでは、床暖房で、自然の光の中で撮影するので、子どももとても自然に撮れるのです。妻が、着付け、ヘアメイク、写真撮影まで行っています。妻は私と結婚してから写真を始め、今は新潟県写真師会婦人部ひまわり会の会長でもあります。

 内山さんは、小さい頃から写真を仕事にしようと思っていたのですか?

内山 中学、高校と剣道をやっていて、中学では県大会で団体優勝、高校では県総体で団体優勝したので、剣道ができる大学進学しようと思っていました。
でも、写真も嫌いではなく小さい頃から撮っていたので、やっぱり家を継がなければいけないと、東京写真大学に入学しました。卒業後、横浜の女性専門のコマーシャルフォトなどを撮る方のところや、横浜の一流ホテル「ホテルニューグランド」での婚礼写真撮影、フェリス女学院での学校写真の撮影、横浜の米軍基地でのスナップ撮影など3年間修業しました。
仕事を通じて一流ホテルの方たちのマナーをみたり、外国の方もたくさんいらっしゃったので異文化に接しカルチャーショックも受けました。
その後、火災で焼失したことで記憶にあると思いますが、赤坂のホテルニュージャパンで2年間仕事をしました。
その頃に、跡を継ぐために新潟に帰らなければいけないと考えてはいましたが、ただ帰っても皆さんには私がどういう写真を撮るのかわからないと思っていました。
そこで、私が知っている著名人を撮ろうと思いました。例えば、当時の田中角栄総理、漫画の「のらくろ」を描いた田河水泡さん、横綱の大鵬さん、女優の森光子さんなどを撮影させてもらいました。
私はこういうものですという挨拶と、新潟で展覧会をしたいのでぜひ撮らせてください、私の休みはこれとこれしかないのでその日にお願いします(笑)、もしOKであればお返事をくださいと、往復はがきに書いて送りました。それで、皆さん都合をつけてくださったのです。田中角栄さんは首相官邸で撮影をさせてもらいました。

内山写真館

新潟に帰って、その肖像写真の展覧会を大和デパートで開催しました。新潟県では個人で初の写真の個展でした。
人物のスペシャリストになりたいと思っていたので、基本は肖像写真家でもあるのです。
新潟に帰ってきてからは、内山写真館を父と妻に任せて、ホテルイタリア軒で婚礼写真家として仕事をしていました。

 ずっと人物を撮影されていたようですが、現在の白鳥を撮影するようになったきっかけは何ですか?

内山 肖像写真は個人のために撮るので、なかなか外へ出せません。そこで、外へ出せる写真を撮りたいと、まず、中国の桂林やイタリアに行って、ルポルタージュを撮りはじめました。その頃は、人物だけでなく、風景や建物の写真も撮っていました。
中国は7、8回行っています。一度行くと1ヶ月くらい滞在して撮影をします。昔の中国は、カメラのレンズのキャップを落としても、次の日に届くくらい安全でした。
ルポルタージュは準備に時間がかかるので、このような写真集は10年に1回くらいしか発表できないのです。
銀座で写真の展覧会をするということは、高校生が甲子園に行くようなものなのでなかなかできないのですが、念願叶い、中国のルポルタージュ写真の展覧会を銀座で開催することができました。
60歳位になった時に息子も新潟へ帰ってきて、これからは自分の時間を使おうと思いましたが、3年程は自分が残したいものが見つからず悶々として過ごしていました。
ある雪解けの日、40羽位の白鳥がガーガーと鳴いて田んぼにいるのに眼が留まりました。それまでは白鳥など眼中にありませんでしたが、スマホで白鳥が翔び立つ姿をフェイスブックに投稿しました。フェイスブックを通じて世界中に友達がいたので、何気なく「明日の朝、村上市の大池で白鳥を撮ってフェイスブックに載せるよ」と投稿して、翌朝、大池に行ってみたら、白鳥で一面真っ白になっていました。
白鳥は石川県や福島県から大池へ飛んできて、一度休んでから、青森県、北海道へと向かうのです。ですから5月の連休の桜の咲く時期まで白鳥がいるのです。
白鳥の多さにびっくりしてフェイスブックに投稿し始めたのがきっかけです。
大池は、アマチュアの写真家が白鳥を撮りに来られるポイントなので、何十年も通っていらっしゃる方もいます。
私は肖像写真が専門でしたが、以前から地元の写真を撮らないのかと言われていました。そこで、アマチュアの方と私の違いは何かと考えて、これは毎日大池に通うしかないと思いました。雨が降っても、雷が鳴っても、嵐になっても毎日、夜明け前に3年間通い続けました。最初の年は、55日間通って、アマチュア写真家の方に皆勤賞だと言われました。アマチュア写真家の方には、白鳥はどういうときに翔び立つのか、白鳥はどういう行動をとるのか教えてもらい、毎朝、白鳥が翔び立つ瞬間を待つのです。
私は、朝日が上がってきて、逆光で、水しぶきがあがるようなとても条件の悪いところを狙って撮影します。最初はきれいな写真を撮っていましたが、次のシーズンには飽きてきて、スローシャッターで撮ってみようか、定番の場所とは違う場所で撮ってみようかと新たなチャレンジをし始めました。
そうこうしているうちに、こういうものを撮りたいと、自分の今まで培ってきた頭の中の引き出しを開いて撮影を始めたのです。
私の脳を刺激した一枚は、頭の中で遊んだ偶然の一枚です。白鳥が翔び立つ瞬間と羽ばたく瞬間に、古いカメラのズームレンズを動かしたところ、時間を閉じ込めた写真になったのです。白鳥と同じに動けばピントが合う、背景はぼける、レンズを動かすと流れていく、それが組み合わされて生まれました。それが、白鳥の湖のクライマックスで王子様とお姫様がいるような写真になりました。
そういった撮り方をすると、その瞬間によって、水滴はエッチングで、羽だけが柔らかく写ったりするのです。

 最初の頃の作品は「UCHIYAMAブルー」と呼ばれる、暗い背景に青い白鳥が印象的ですが、だんだん色が入った写真になってきましたね。

サンクトペテロブルグの美術館の
永久コレクションとなった作品とともに
(右側:佐々木綾子参事)

内山 「UCHIYAMAブルー」がいいという方もいらっしゃいますが、人の言うことを聞きたくないので(笑)。
岸の茶色いシダが朝日に当たって、赤や黄色になるのです。白鳥や水しぶきは太陽の光が当たると金色になるので、ブルーから金色に移行して来ました。
テーマも白鳥ではなく、生命力のようなものに変わってきました。抽象的な写真も好きなので白鳥とは思えないような写真や、水滴がテーマとなっている写真もあります。
写真は世界で12枚しか作りません。4枚は手元において、残りの8枚だけ世界に出て行きます。写真集とは違う紙を使っているので、シックな感じになっています。
白鳥の写真は、ロシアやフランスでの展覧会でも、とても評価していただいています。ロシアのサンクトペテロブルグの美術館では、永久コレクションにしていただいている写真もあります。
今後は、アメリカのシカゴやロサンゼルスでも展覧会をやってみたいですね。

 このような写真は偶然を待って撮影をするのですか?

内山 このような写真は大池でなくては撮れません。背景の松林が暗くて、白い白鳥に露出をあわせてシンプルに表現できるのは大池だけです。
その大池に通って、自分が撮りたいと思うものに近づくよう、自分の引き出しを開けながら判断して、その瞬間を呼び込むのです。そして、そこに偶然性が加味されるのです。
今のカメラは撮る前は見えていますが、シャッターを切る瞬間は見えないのです。ということは、その瞬間は不確かなものなので、偶然性はあります。
でも、そういう写真を撮りたいと手も頭も動かして狙って撮るので、偶然だけではないのです。カメラで描いているのです。


内山アキラ/内山写真館会長。
村上高等学校卒、東京写真大学卒(現・東京工芸大学)。現在、長岡造形大学講師。
日本写真文化協会会員・日本写真家協会会員・新潟県写真家協会理事。
2003年日本を代表する写真作家10名に選ばれる。
日本写真文化協会夏季大学写真講師。
白鳥の写真集「命の輝き」は新潟市立中央図書館(ほんぽーと)などで見ることができます。

(平成31年3月8日インタビュー)
※役職等はインタビュー時現在です。
※インタビュー協力:佐々木綾子新潟県福祉保健部参事(女性医師支援担当)、
新潟県村上地域振興局健康福祉部長(村上保健所長)

■関連リンク
内山写真館
uchiyama.akira (Instagram)

印刷用コラム:カメラで描く~村上市大池の白鳥が世界へ翔ぶ~(PDF形式940KB)
PDF版デザイン協力:新潟県タオ国際交流員