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第34回 国民文化祭・にいがた2019、第19回 全国障害者芸術・文化祭にいがた大会

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PRサポーターズ&インタビュー・コラム

中小私大図書館の地域貢献に向けたとりくみから

2019年3月28日

PRサポーター 新潟青陵大学 学長 諫山正さん

諫山正学長

古代アレクサンドリア図書館の話にさかのぼるまでもなく、中世から現代にいたるまで世界史における図書館は知の拠点としてそれぞれの地域の文明の中心を担ってきました。40数年も前のことですがベルリンに留学したときに、私はブランデンブルグ門に始まる「ウンター・デン・リンデン」という大通りをしばしば訪れました。当時は東独圏内にあって森鴎外が『舞姫』で活写したような華やかな雰囲気はまったく見られませんでしたが、通りの両サイドに立ち並ぶ歴史的建造物群は壮観でした。国立オペラ座の反対側には、フンボルト大学(かってのベルリン大学)があり、続いて18世紀半ばにプロイセン王国のフリードリヒ大王が王立図書館として建てた国立図書館がありました。この国立図書館を、ドイツ現代史の資料探索に訪れ、閲覧制限のあったナチス関連資料を司書の計らいによって特別閲覧室で利用させて貰った思い出があります。全館が蔦で覆われ、堂々としたとても美しいバロック風の建物だったと記憶しています。大王が文化拠点を創ろうとした意図が周辺の宏壮な建物群からも読み取れました。図書館は中世から近代にかけて西欧文明の中核であったということをあらためて認識したものです。そのようなことから、図書館や美術館のような文化施設のありようが、その地域の文化の風格を示すようになると考えるようになりました。

2017年4月に竣工した1号館外観(写真上)
1号館は吹き抜けがあり明るい雰囲気(写真下)

同様に大学図書館はその大学の風格を示すものと考えています。大学の社会的使命が研究・教育・社会貢献である以上、大学のシンボル的施設である大学図書館も地域社会における情報ネットワークや知的集積の拠点であるべきで、それなりの社会的役割を担わなければなりません。たとえ中小規模の地方私大であったにしても、研究・教育と並んで地域貢献が大学の重要な社会的使命であるという時代の要請に応えなければなりません。新潟青陵大学・短期大学部図書館としても地域に対するメッセージとして、新校舎建設の際に、地域社会においても知的集積の拠点であるべき大学図書館を新しい建物の中心に位置づけるという方針を採用しました。そして新図書館の建築計画の参考にしようと、近年新築された首都圏のユニークな大学図書館を視察することになったのが3年半前のことです。

視察した図書館は東京理科大学葛飾キャンパス、成蹊大学、東京経済大学、玉川大学などの付属図書館で、それぞれの建物のデザインは魅力的で、利用システムは主たる利用者である学生へのメッセージが明確です。開架式の部分も広く学習図書館としての機能も充実しています。もちろん今はやりのラーニングコモンズは施設の中でももっとも目立つ位置におかれています。むろん図書館の効用は、どのような利用者がいるかを想定し、そのニーズに対応して資料を収集して蓄積してゆくことによってその図書館の存在意義があるのですから、資料コレクションの独自性が図書館としての基本的要素といえるのです。さらに学生向けには無論市民開放を重視する図書館として、一定の基本図書が開架で配置されていました。本は手に取って見るということが大事です。本の意匠は読書への誘いの契機となります。東京理科学葛飾では理工系の学部学生・大学院生向けの基本的専門書が開架スペースに配置され、特定の講義のシラバスに掲載された文献をすべて陳列していました。東京経済大学では教養図書を中心とした館長推薦図書などというものがありました。どのようなレベルのどのような分野の図書を収書して、配列するかということはその大学の学生に対する教育目的のメッセージでありポリシーの一環でありますし、地域住民に対しても大学がどのようなレベルのどのような性格の知的拠点であるかを端的に示すのがこれからの新しい図書館像ということなのでしょう。

新潟青陵大学図書館にあるブックツリー(写真上)とラーニングコモンズ(写真下)

新潟青陵大学・短期大学部図書館の場合は、その大学・短大の専門領域の関係から現在は看護・福祉関係の収書を中心とした学術研究図書と教養図書が中心となった学生の研究や学習を支援する学術図書館の役割を果しています。市民に開放された図書館として本学に特徴があるとすれば、絵本を始めとする児童図書などお母さん方が本を手に取って見ることのできるよう配慮していることです。絵本や紙芝居を配架した部屋「えほんのもり」を設置して、一般利用者が小学生以下のお子様と一緒に利用できるようになっています。

絵本や紙芝居を配架している「えほんのもり」(写真上)
とまちライブラリー設置の際にさくらカフェで行われたおすすめの本を持ち寄る「植本祭」の様子(写真下)

2年前の地域貢献ウィークでは新図書館独自の催しとして、「子どもと絵本」をテーマとする展示(主として眞壁伍郎氏所蔵の絵本の原書、原画の展示)や『冒険者たちガンバと15ひきの仲間』の作家斎藤惇夫氏の講演を中心に、絵本のビブリオバトル、絵本の読み聞かせとワークショップなどのイベントを開催しました。翌年には学生、教職員、一般市民の利用者が本を通じて交流できる場所として「まちライブラリー」を館内のさくらカフェに設置しました。そこでは参加者自ら書いたメッセージ付きの本を持ち寄り、本棚に「植本」することで、利用者が自らの手で図書館を育ててゆく活動で、お勧めの本を持ち寄って展示する植本祭を開催しました。2019年5月からは、新潟子どもの本を読む会・新潟青陵大学・短期大学部図書館共済講座「絵本の世界を旅する」(講師:眞壁伍郎氏、連続5回)を開催予定です。どうぞおいで下さい。

 


諫山正さん/新潟市出身。新潟大学経済学部長、新潟青陵大学短期大学部学長代行等を経て、2011年4月より新潟青陵大学学長。
研究分野は、経済学(経済政策、財政・公共経済)。

※役職等は執筆時現在です。

■関連リンク
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部(Facebook)

印刷用コラム:中小私大図書館の地域貢献に向けたとりくみから(PDF形式1,031KB)
PDF版デザイン協力:新潟県タオ国際交流員