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第34回 国民文化祭・にいがた2019、第19回 全国障害者芸術・文化祭にいがた大会

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PRサポーターズ&インタビュー・コラム

「失った6点より得た1点」

2019年3月27日

PRサポーター 元シニア海外協力隊 パナマ派遣 齋藤芳子さん

「Goooooooool!(ゴ~~~・・・ル!)」

『Mi Diario』(2018年6月25日付け)

写真は2018年ワールドカップパナマ第2戦の翌日6月25日の地元新聞の主要面からです。真っ赤なユニフォームをまとい狂喜乱舞するパナマサポーターの群れ。何も知らずにこの写真だけを目にすると「あぁ、パナマは勝ったんだ!」と誰もが疑うことなくそう思うでしょう。

ところが前日の対イングランド戦の実際は「6対1」で、パナマはいわば大敗という結果だったのです。にもかかわらずのこの一面です。

当時JICAのシニアボランティアとして中米のパナマに滞在していた私は、試合当日もテレビで観戦し結果を知っていたので、翌朝この新聞を手にした時はいささか狐につままれたような錯覚に陥りました。よく読めば記事は確かに敗戦の事実を伝えてはいたのですが・・・・。
その後知り合いの人々に会うごとに「残念だったね、昨日は・・・・」と言いかけるとすかさず「いいや、ヨシコ。1点を取ったよ。このことが大事なんだ。歴史的な1点だ!」と皆が誇らしげに同様にそう答えるのです。
歴史的な1点・・・・・・。そういえばこのワールドカップにパナマの初出場が決まった2017年10月の時も深夜決まった瞬間には盛大な花火があちこちで打ち上げられ、翌日は大統領の宣言により学校や官公庁は皆臨時休業となりました。歴史に刻むべき快挙を国を挙げて祝う為です。真夜中のその宣言を聞く前に眠りについた私は、翌朝いつものように学校に向かったのですが・・・・校門は閉ざされ、ひっそりとした通りには誰もいません。偶然、寄宿舎から出て来た学生に尋ねると件(くだん)の通り臨時休校とのこと。その大らかともいえるお国柄に思わず笑みがこぼれて帰路に着いたことを覚えています。

『Mi Diario』(2018年6月25日付け)

失った6点より得た1点。負けたことより「戦った」というその紛れもない事実を手にしたことへの誇り。物事は捉えようとはよく言ったものだとこのとき改めて思いました。そして、この捉えようとは意外にも人々の人生観や幸福感をも左右するのではということをパナマの人々を通して学ぶことになります。というのも・・・・。

国連が発表した「2018年世界幸福度ランキング」の結果を見たことがきっかけでした。上位3国はさもありなんのフィンランド等北欧諸国が占めていますが、途上国といわれる小さな国パナマは27位という結果を得ました。一方、経済大国・先進国に属する我が国日本はどうでしょう。何と、ちょうどパナマの倍の54位に甘んじています。文化・風土・歴史・宗教観・・・・それらのすべてが異なる条件下での比較ですから一概に判断はできませんが、前段で述べた「失ったものを悲しむよりも得たものへの喜びを大切にする」パナマの国民性と相通ずる結果なのではと思い、個人的には大いに考えさせられることになった両結果でした。思えば配属先の広い校舎を毎日あくせく小走りしていた私はその度ごとに「エクササイズか?」「転ぶなよ」などと励まされつつもいつも不思議がられていました。長年かかって染みついたセカセカ感と心配性はそう簡単には変えることはできませんでしたが、自分の周りのパナマ人が他者に対して寛容であることや些細なことで怒ったりしていないということに気づいて以来ずっと、「幸せのものさし」への問いは人生をちょっと省みるときの私の中での重要なクラベ(鍵)になっています。

齋藤芳子さん(後列)


齋藤芳子さん/2016年10月~2018年10月までシニア海外協力隊としてパナマに派遣。
小学校での教員経験を活かし、シニア海外協力隊として現地の教員養成学校で活動を行った。

※名称等は執筆時現在です。

印刷用コラム:「失った6点より得た1点」(PDF形式663KB)
PDF版デザイン協力:新潟県タオ国際交流員