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第34回 国民文化祭・にいがた2019、第19回 全国障害者芸術・文化祭にいがた大会

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PRサポーターズ&インタビュー・コラム

車のデザインを通して文化を見る

2019年3月13日

PRサポーター 長岡造形大学長 和田裕さん

和田裕学長

私の「文化」に関する意識の芽生えは、高校時代にデザイナーを志したことから始まりました。学び始めたデザインは明らかに日本固有のものではありませんでした。イギリスの産業革命に端を成し、ドイツにおけるバウハウスにて確立し、アメリカの商業主義の中で育ち、その後日本に伝わってきた異文化そのものでした。学生心に、デザインを学ぶ過程で用いられる言葉全てが英語であることに一抹の情けなさを覚えたものです。デザイナーになる為の一歩は西欧の文化に目を向ける事でした。

社会に出てからは長く車のデザインに従事しました。車は国の基幹産業であり、常に国内のみならず海外のコンペティターを意識して仕事をする毎日でした。俗にいう外車ですが、その国、その民族固有の文化が色濃く車のデザインに現れていました。業務で様々な国に出張したおり、現実の異文化に直に触れ、固有の文化は生活環境(自然・社会制度・宗教等)から生まれるということを改めて肌で感じました。環境が人そして文化を創るのですね。

私がデザインを学び仕事とした時代、60.70.80年代の車はキラキラ輝いていました。フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、北欧の車、そしてアメ車。皆、個性豊かにお国柄を発揮していました。フランス、シトロエンDSの宇宙船を感じさせるような唯我独尊の形、ドイツ、ベンツに代表される工業製品此処に有りの冷めたボディワーク。小粋なブリティッシュライトウェイトスポーツと気品あふれるジャガーのイギリス、さすがローマの末裔イタリア、無駄をそぎ落としたアルファの端正な締まったボディ、飛行機屋の作った車サーブ、北の雪国に生きるドイツ車とは違った剛性感を備えていました。お金大好きメッキてんこ盛り、マッチョ好みのアメ車。

そうそう国民車も国ごとに主張していました。カブトムシ(フォルクスワーゲン)、フィアット500、2CV、日本はテントウムシでしたっけ。皆独特な形で強烈な個性を発揮していました。その国の事情から生まれる必然性があったのですね。色もレース活動を主体にしたナショナルカラー。イギリスはジャガーのブリティッシュグリーン、ドイツはベンツもポルシェもジャーマンシルバー、イタ車は、情熱的なイタリアンレッド、フランス車は、アルピーヌの澄ましたフレンチブルー、日本車はホンダF1に敬意を表してサムライホワイトでしょうか。とにもかくにも、車を通してその国々の文化の香りがプンプン伝わってきた時代でした。翻って今はどうでしょう?エンブレム(マーク)を外すと、どこの国の車やら、どこのメーカーの車やら・・・まったく文化の香りが無くなってしまいました。寂しい限り。人・モノ・企業のグローバル化・高度情報社会(含むデジタル化)の弊害ですね。

何事も規模の拡大や普及を意識するとエッセンスがボケてきます。例えば柔よく剛を制すとされた柔(やわら)。柔術から危険技を取り去った柔道へ、そして国際化に伴って体重別=スポーツへと大きく変わってきてしまいました。この伝でいくと日本の誇る食文化、日本食も危ういのでは。お相撲もね。

文化の継承においては、波及・拡大を目指してはいけないのかもしれません。その意味において今回新潟で開会される「国民の文化祭」は、日ごろ目に触れない、エッセンスがギュッと詰まった細やかな文化活動にスポットを当てる良い機会なのではないでしょうか。

地域にとっては当たりまえの何気ないコト(文化)に触れることを期待する、これからのインバウンド向けに資源を掘り起こす意味においても……。


和田裕さん/いすゞ自動車株式会社で21 年間デザイン業務に携わる。
1994年、長岡造形大学開学と共に着任。
専門分野はトランスポーテーションデザイン。
主に関わった車両は、エルフ、ロデオ、ビッグホーン、
ウィザード、ミュー、ディアフォルテ/RIZIN(ゲレンデ整備車)、
10式雪上車等。
2012年4月より長岡造形大学長。

※役職等は執筆時現在です。

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印刷用コラム:車のデザインを通して文化を見る(PDF形式668KB)
PDF版デザイン協力:新潟県タオ国際交流員