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第34回 国民文化祭・にいがた2019、第19回 全国障害者芸術・文化祭にいがた大会

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PRサポーターズ&インタビュー・コラム

ナイチンゲールの言葉

2019年1月22日

PRサポーター 公立大学法人 新潟県立看護大学長 小泉美佐子さん

小泉美佐子学長

フロレンス・ナイチンゲール(1820-1910年)は「近代看護の母」と呼ばれる世界的に知られた女性である。クリミヤ戦争に訓練された看護師団を率いて献身的な看護活動にあたったことが有名であるが、戦争から帰国後、専門教育を施した看護婦養成の必要性を説き、「ナイチンゲール看護学校」を創設した。そこで学んだ教え子達は、世界各国にナイチンゲール方式と呼ばれる看護教育を広めることとなり、「近代看護教育の生みの親」とも呼ばれている。

著作には「看護覚え書」の他、膨大な量の著作を残している。「看護覚え書」において、「看護とは、新鮮な空気,陽光,暖かさ,清潔さ,静かさを適切に保ち、食事を適切に選択し管理すること―こういったことのすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えることを意味すべきである」と記している。こうした看護の働きかけは、私が外科病棟の看護師をしていたときの体験と結びつく。「生命力の消耗を少なく」とは、逆に言えば「自然治癒力を高めること」であり、手術後の回復はまさに自然治癒力に依る。それを整える事が看護であるとは、体験と照らして腑に落ちる看護の定義である。

新潟県立看護大学

「看護覚え書」のなかで「変化」といった章立てがある。「美しい景色を見せること,病床の花とか,こまごました物についてその変化に気を配ることによって患者の神経は安らぎを得る。また陽光が射してくるだけで神経が鎮まることも多い」と環境の変化がもたらす影響に触れ、「ちょっとした針仕事や,ちょっとした書き物,あるいはちょっとした掃除など,これができる病人の場合、それは病人にとって何よりの救いとなる」と記している。別な章では、病人に音楽を聞かせることの効用について触れている。当時,生の音楽に触れることはよほどの上流階級でなければあり得ない。ナイチンゲールは貴族の家庭に生まれ、幼少期から語学,歴史,数学,経済学,美術,音楽,文学といったあらゆる教育を受けた。芸術的な感性は、それらの教育により養われたものだろう。一方、彼女は30代後半から慢性疲労症候群に由来する症状に悩まされ、死去するまでの50年間は病床で本の原稿や手紙を書く生活となった。自身の体験をとおして、ベッドや周りの居心地の良さ,視覚的に美しいもの,音や声,音楽の配慮を説いたと思われる。

ナイチンゲールは「この覚書は、看護婦に看護することを教えるための手引書でもない。これは他人の健康について直接責任を負っている女性たちに、考え方のヒントを与えたいという。ただそれだけの目的で書かれたものである」と述べている。自然治癒力を高める働きかけの効果は現在、医学的に様々証明されつつある。そのヒントはナイチンゲールにありか?改めて敬服の念を抱く。


小泉美佐子さん/自治医科大学教授、群馬大学教授、同大学大学院教授、
新潟県立看護大学看護学部看護学科教授などを経て、平成29年より同大学長。
医学博士(昭和大学大学院)、看護学修士(千葉大学大学院)。
※役職等は執筆時現在です。

印刷用コラム:ナイチンゲールの言葉(PDF形式764KB)
PDF版デザイン協力:新潟県タオ国際交流員