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第34回 国民文化祭・にいがた2019、第19回 全国障害者芸術・文化祭にいがた大会

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PRサポーターズ&インタビュー・コラム

人と人、時代を紡ぐ写真

2018年10月5日

PRサポーター 吉原写真館 吉原実保さん

新発田市大手町の商店街の通りを抜けて、路地を曲がったところに、吉原写真館はあります。建造から約80年が経つモルタル塗りの外壁のレトロな建物は、2017年10月に文化庁から登録有形文化財に指定されました。写真館としては県内で初めての登録となります。今回は、この歴史ある写真館の6代目である吉原悠博さんの妻・吉原実保さんにインタビューをしました。

吉原写真館は2017年10月に登録有形文化財となりました。

 実保さんは、県外出身と伺いましたが、どういったきっかけで新発田に来ることになったのですか?

実保 出身は神奈川県ですが、母方の祖母が新発田にいたので、小さい頃によく遊びにきていました。しかし、そこに住まわれていた祖父母が他界し、私たちが土地・お墓を守らなければ、将来はどうなるのだろうかと思い移住しました。

撮影場所の背景背景に絵画は昔からのもので、今は大変珍しいもの。

新発田では高齢者&障がいのある方のための趣味の教室の企画コーディネーターをしていました。その仕事を通して夫と知り合い、結婚してからは写真館のお仕事をしています。

 結婚されてから、写真の世界に触れるようになったのですか。

実保 写真にはもともと興味がありましたが、美術の分野にも強い関心がありました。また、写真は撮る側と撮られる側の両方の気持ちがわからないといい写真は撮れないと思います。過去のモデル経験がいきています。写真は、撮られる側のその人らしさをいかに出すかが大事だと思います。
先日、友達のお父様のお葬式に行ってきました。私が撮影担当した遺影写真がありましたが、親戚の方や葬儀屋さんが声を掛けてくださって、「あんなに良い写真はない」、「亡くなったはずなのに、まるですぐそこにいるみたいだ」というお言葉をいただきました。私は、戸惑い、また嬉しくて、撮影担当して良かったと思った瞬間、涙が頰を伝っていました。また、写真には素晴らしい力があるのだなと本当に思いました。写真を見て過去を振り返ることができるから、力強く前に進むことができのだと考えました。顧客の人生に、こんなに身近に関わることができるのは、とても幸せなことだとつくづく思いました。
こうした仕事を受け継ぐために、ご先祖様に呼ばれ新発田にきたんじゃないかとも感じるのです。

インタビューに応じてくださった吉原実保さん

 まさに天職だったのですね。新発田では、商店街の店に額に入れた写真を展示する「写真の町シバタ」というイベントが2011年から毎年開催されていますが、これはどのようにして始まったのですか?

写真スタジオの様子 手前の写真機は、アナログとデジタルを最新の技術で融合させたもの。

実保 私の夫は、現在写真館の館主をしておりますが、以前は海外や東京を行ったり来たり、美術家として忙しい日々を過ごしていました。今から13年くらい前になりますが、蔵の中から吉原の家 族を撮影した大量のガラス乾板(昔のフィルム)を発見しました。吉原は、その乾板に映る家族の肖像の美しさに、心を動かされ、新発田で写真館を継続させたいと思ったそうです。

昭和11年に建てられた写真館は建設当時の面影を残しています。

なぜ家族が写った乾板が残っていたかと いうと、昭和10年の新発田大火のときに、夫の祖母が乾板を風呂敷に抱えて逃げたからなのです。その後、夫は、時間をかけて蔵に残って いる写真や資料を調べ上げました。2代目、3代目は明治時代の気鋭な写真家である江崎礼二の弟子だったということも分かりました。こんな身近なところに、求めていた芸術写真があったことに、随分感動したようです。

その後、吉原は、新発田の街中に数多くのお宝写真が現存することを知りました。地元の仲間が集まり、皆で、その写真をお借りして、商店街で展覧会をしようということになりました。思い出の写真を大きく引き伸ばして額装して展示したのですね。町中から素晴らしい写真が、次々出てくるのには本当に驚かされました。新発田の商店街は、シャッター下ろす店が増えてどうしようもない状態が続いていたのですが、がんばっている人が次々繋がって協力し始めました。

昔ながらの写真機は現在でも使用することができます。

私は関東からきたせいか、新発田の奥ゆかしさと情の深さに、とても感動しました。はじめは有志7,8人くらいで始まったのですが、いつしか50人ぐらいになり、どんどん輪が広がっていきました。これは素晴らしいイベントだと新聞やテレビの取材も増えました。おじいちゃん、おばあちゃんが集まり、「こんな時代もあったね」と瞳を輝かせながら思い出話に花を咲かせています。

 それぞれのご家庭にあった思い出の写真がこのイベントにつながったのですね。

むかし使用されていた法被 ローマ字で書かれているハイカラなもの

実保 写真で人と人とを次の時代に紡いでいくという、すごいイベントだと改めて感じました。若い人だけで何かしようといっても難しいかもしれませんが、地域のチームワークがあることによって、世代間での交流が生まれたり、一つのことで集まって何かをすることで、すごく仲良くなれると思います。そこでできたつながりから、ヴィンテージ自転車のイベントを新発田で開催したり、「写真の町しばた&音楽+料理」、また最近では映像をコラボしたりと、写真という垣根を越えて、様々なイベントに発展しています。


「写真の町シバタ」は毎年10月頃に開催されています。これまで写真にあまり興味がなかった方も一度訪れてみませんか。


(平成30年8月16日インタビュー)
※固有名詞等はインタビュー時現在です。

■関連リンク
吉原写真館
吉原写真館(facebook)
吉原写真館(Instagram)
写真の町シバタ(facebook)

印刷用インタビュー:人と人、時代を紡ぐ写真 (PDF形式944KB)
PDF版デザイン協力:新潟県タオ国際交流員