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PRサポーターズ&インタビュー・コラム

お客さんが育ててくれた技~藍で染め、藍を抜き、色で描く~

2018年7月10日

PRサポーター 泉屋染物店 店主 山田真嗣さん

しばたん城下町新発田の染色工芸藍染職人、山田真嗣(まさつぐ)さんに、新発田の金魚台輪のキャラクター「しばたん」がインタビュー!

 

しばたん 山田さんは、新発田市で3代続く染物屋さんですよね?

山田真嗣さん

山田 祖父の代から続いているのですが、父が小学生1年の頃に亡くなり、京都修行中に祖父も亡くなりました。先代、先々代の技術は私には一切繋がりませんでした。当時思ったものです。「あと2~3年でも祖父が長生きできなかったものか。」と。

しばたん どうやって技術を身に着けたのですか?

山田 18歳から3年間、京都で修業しましたが、染め職人の元での修業とは違い、染物全体を管理し企画する仕事場でした。知識は学べますが技術は見て覚えるしかありません。当時の記憶は断片的ですが、京都の染工場の職人さんが染める様子は、鮮明に記憶されていました。それらは地元新発田で染物を始めるのに大きな力となりました。3代目ではありますが、今の染技術は、私の代で始まったようなものです。むしろ先代の技術が新しい技の妨げになったかもしれません。
私には、身近に師匠はいませんが、お客様の「目」が育ててくれたといっても過言ではありません。一生懸命作り上げた商品をお客様がお買い上げいただく。そのことで新たに商品を作る事が出来ます。その繰り返しで技術は向上します。ここで必要なことはただ制作するのではなく、今作っている物が先の物よりさらに素晴らしい商品を作る。その心がけが職人にはとても大切であると思います。お客さんの「目」は常に客観的でそれでいて期待に満ちています。職人として常に謙虚でいられるのは、お客様の多くのきびしい「目」があるからです。
買っていただく。育てていただく。宣伝をしていただく。そしてアイディアをいただく。本当にありがたく感謝でいっぱいです。

しばたん 藍染というと紺と白というイメージですが、いろいろな色を使われていますね?

山田 修業先が京都で、京友禅に関係する職場です。毎日、目の前を数多くの染め上げられた商品が通り過ぎます。魅力的な柄は、紙に写し取って彩色のメモを書き入れます。その繰り返しが、色を使うことの想像力を刺激します。加工方法もローケツ染めから、藍を抜く「藍抜染(あいばっせん)」という技術を再び京都で学ぶことで、彩色の可能性を大きく広げる事が出来ました。藍色に対してあらゆる色は鮮やかさを増します。
日常、目にする藍染作品は、藍色と白、または染め過程の「あさぎ色」などいたってシンプルです。それはこの分野で人間国宝を生むほど日本文化の中に溶け込んでいます。私の作品は、ある意味、その殻を破ったのかもしれません。それは、市場でいかに付加価値をつけるか。私が考えたその答えかもしれません。

しばたん このような特色ある作品を作るきっかけはあったのですか?

山田 ある校長先生から「退職の記念品に使いたい」とのご注文を頂戴しました。それは、藍の濃淡に一輪のあやめの花を白く抜く作品でした。ご注文に対し有難さも手伝い、あやめに丁寧に色を入れてお納めしました。そのことでお客様から感謝の言葉を頂戴しました。その喜ばれる様子に、私の染物屋としての将来像が見えました。その結果、他の商品との差別化につながり、大きく売り上げに貢献してくれました。まさにお客様のご注文からアイディアが生まれ新たな作品作りに繋がりました。これは、20年も前の事でした。昨年、同じお客様からのご注文では、職人として長年培った技を全力で作品に注ぎました。再び喜ばれる様子は皆さんの想像通りです。

しばたん 山田さんの作品は、繊細ですね。

しおりの藍を抜いた後、
ひまわりの色を入れる工程

山田 日常お使いいただく和装小物の商品から、額などに作品を入れインテリア・記念品としてお使いいただく商品開発も要求されます。染色作業は尚一層繊細になります。この頃には、京都修行中に着物を写し描いた図柄は使えず、写真やスケッチなどから新たに図柄を起こし、工程上の最初からの見直しも必要になります。「もっと、もっと、良いものを作ろう」職人魂にも火が付きました。丁寧な彩色を施す繊細さと多様性は、ネット注文から去年暮れの東京浅草公会堂の作品展にも繋がりました。また、藍抜染の技術は、ドイツからのご注文にも繋がりました。ショパンの手描きの楽譜を「藍染しおり」に染め上げるとても難度の高い仕事でした。道具も特注品を使い、精一杯の技でお納めしました。
昨日作った作品より、今、作っている作品が、そして明日はもっと素晴らしい作品を作ろう。そんな制作精神を大切にしたいと思っています。
思えば、最初に作った商品をお買い上げいただいた方はどなただったのか。
まだまだ未熟な私の商品をよくぞ買っていただいた
改めて、感謝の気持ちでいっぱいになります。有難うございました。


山田真嗣さん/新発田市生まれの染色工芸藍染職人。泉屋染物店3代目店主。
協力:新発田市観光協会 企画員 中山綾子 さん(平成30年6月13日インタビュー)
※店名、肩書き等はインタビュー時現在です。

■関連リンク
新発田市観光協会 しばた観光ガイド
泉屋染物店

印刷用インタビュー:お客さんが育ててくれた技~藍で染め、藍を抜き、色で描く(PDF形式 414KB)
PDF版デザイン協力:新潟県タオ国際交流員